第13回:ペンネームの付け方 (3)
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第13回:ペンネームの付け方 (3)

By mogura

■オリジナルなペンネーム■

ペンネームは基本、自分の好きなように付ければ良いと思います。ただ、好きに付けろとなると、迷いが生まれるのもまた事実です。前回の各種パターンが参考になるでしょう。でも、誰にも似ていないペンネームは大事。

オリジナルでペンネームを付けるコツは何か?

そんな人に、いくつか参考になるポイントはあります。三谷幸喜脚本の人気テレビドラマ『古畑任三郎』のオープニングシーンで、田村正和さん演じる古畑任三郎が、探偵の名前について考察しています。

日本の探偵は、珍しい名字と平凡な名前の組み合わせか、その逆が多い……と。金田一耕助、明智小五郎、古畑任三郎。確かに、そういう傾向はありまう。顎十郎や十津川省三や杉下右京、浅見光彦もそうですね。

ペンネームを付けるとき、つい名字も名前も派手にいてしまうか、逆に両方とも地味にしてしまう人は多いです。それでは、読者の印象に残りません。三谷幸喜さんの指摘は、参考になるでしょう。

 

■日本文化と名跡襲名制度■

立川談志師匠は、自分が希望した名跡を襲名できなかったため、弟子には前座や二つ目の内は憶えてもらいやすい奇抜な名前を付け、真打ちになったら好きな名前を選ばせるという方針という話は、前々回で書きました。

毒蝮三太夫さんも、立川談志師匠の命名。

立川流Bコースにも所属していたビートたけしさんはこの方法論を受け継ぎ、弟子のたけし軍団には奇抜な名前を付けていますね。ただ、若手の内はともかく、ベテランになると奇抜すぎると厳しくなる名前もあります。

落語や歌舞伎の場合は、人気や実力のアップと共に、かつての名人上手が名乗った名跡を襲名するという制度があります。大相撲も、貴乃花や若乃花のように、父親や伯父の四股名を継承しています。

元々、日本では生涯に何回も名前を変えるのが普通でした。勝海舟も幼名は麟太郎で、元服して名乗る諱(いみな)は義邦、明治維新後に改名して安芳。よく知られる海舟は号、文人墨客が付ける風雅な名前です。

 

■脚韻と頭韻とペンネーム■

小学校の時の先生で、川崎正樹先生という方がいらっしゃいましたが、初めての授業の時に「かわさき・まさきで、ちょっと発音しづらいが……」と自己紹介されて、自分も確かにそうだと思ったモノです。

私たちは、つい字面にこだわってペンネームを付けがちですが、発音したときに言いやすいとか、耳に残るというのも、実は大事な要素です。自分にとっては、そういうことを考える切っ掛けになった出来事でした。

ちなみに、このような文字の下側で韻を踏むのを『脚韻』と呼びます。元々は漢詩の用語ですが、漢詩以外でも見かけます。花札の八月の20点札は芒(ススキ)と月ですが、ススキとツキで脚韻を踏んでいます。

逆に文頭に韻がくるのを『頭韻』と呼びます。

花札の二月の10点札は梅に鶯で、ウメ・ウグイスで、頭韻です。ただし、梅にメジロで尻取りだという説もあります。花札は松に鶴や鹿に楓(紅葉)、藤に時鳥(ホトトギス=ジチョウ)など尻取りが見られます。

 

■頭韻とネーミングの関係■

頭韻は海外でも見られます。マリリン・モンローはM.M、ブリジット・バルドーはB.B、クラウディア・カルディナーレはC.Cとか、名前と名字の最初の文字の韻を揃え、イニシャルを重ねる人もいます。

英語には頭韻法(alliteration)という表現技法さえ有ります。

King KongやMickey Mouse、Donald Duck、Peter Panなども、頭韻を重ねたネーミングですね。Coca-ColaやIntel insideなおの社名やキャッチコピーもそうですし、World Wide Webもそう。

頭韻と言えば、まついなつき先生が、海外旅行でパスポートを観た入国審査官に、韻を踏んでると感心されたとか(中島らも『明るい悩み相談室』の挿絵で読んだ記憶がありますが、うろ覚え)。

そう言えば、梶原一騎先生の作品の主人公は、星飛雄馬(巨人の星)や番場蛮(侍ジャイアンツ)、巴突進太(柔道讃歌)など、頭韻の名前が目に付きます。丹下段平も清音と濁音ですが韻を踏んでいます。

 

■音を多数重ねてみる視点■

韻や発音という点で、ラジオを聞いていたら、気象予報士の佐々木聡美さんは、「ささきさとみ」で〝さ〟が3回も登場し、普通に名前を呼ばれると「佐々木聡美さん」で4回もさが登場すると語っておられました。

言われてみたら、確かにさが多いです。〝おのののか〟的な、すもももももももものうち的な、わざと同じ音を重ねるのも、面白いでしょう。佐々ササミ、みたいなペンネームの作家は既にいそうですが。

音という点で言えば、例えば田中若葉だと、TANAKA WAKABAで全部の母音がA。中畑雅也もNAKAHATA MASAYAで全部の母音がAです。こういうのは、遊びとして面白い視点でしょう。

発音し辛さを逆手に取って、印象に残るペンネームもアリでしょう。

ここら辺に興味を持ったら、黒川伊保子著『怪獣の名前はなぜガギグゲゴなのか』 https://amzn.to/2C6SEW5 などを読まれても、好奇心が満たされるでしょう。学術的な妥当性はともかく、視点が興味深い視点の本です。

 

 

※ペンネームについて考えれば、自分の作品の登場人物の名前のネーミングにも応用できるはず。登場人物のネーミングにもいくつかの考えるべきポイントはありますが、それはいつか機会があれば。


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